音楽CDの売上が年々低下していて、レコード会社はそれを“違法コピー”(ネット上でのファイル共有を含む)が原因だとしてきた。今日のasahi.comにもこんな記事が出ていた。
音楽ソフト、5年連続の前年割れ 不正コピーなど影響か
日本レコード協会が22日発表した03年の音楽ソフト生産実績は、音楽CDの生産が前年比4%減の3億1526万枚、国内出荷額が同10%減の3879億8700万円と5年連続の前年割れとなった。アナログディスク(レコード)やカセットテープを加えた音楽系ソフト全体の出荷額も同10%減の3996億9000万円と5年連続の減少。
音楽DVD(デジタル多用途ディスク)の台頭や不正コピーCDの増加などが原因と協会はみている。音楽DVDなど映像系の音楽ソフトの03年の生産は前年比2.1倍の3218万3000枚、出荷額は同50%増の564億8900万円と大幅に伸びた。
これらを合わせた03年の音楽市場全体では、生産は同1%増の3億6057万枚、出荷額は同5%減の4561億7900万円だった。
http://www.asahi.com/business/update/0122/096.html
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細かい数字が色々出てるので、「日本レコード協会」のサイトを見てみようとふと思い立った。今までもその組織の存在自体は知っていたけど、別に楽しいことは書いてなさそうだし、なんとなく敵だと思ってたので(笑)。
で、見てびっくり。
色々統計データが載ってるんだが、「不正コピーCDの増加」によりCDの売上が低下しているとは、どうしても読めないのだよ。つまり、データを恣意的に歪曲して解釈し、自分の頭で考える能力のない垂れ流しマスコミの力を使って世論を操作していたわけ。
いや、まあ、上のasahi.comの記事にも既に答えは書いてある。CDの売上は減ってるが、音楽DVDもあわせて“音楽ソフト”として集計すると、生産・出荷額ともに概ね横ばいなのだ。
もっと細かく見てみると。
http://www.riaj.or.jp/data/monthly/2003/200312.htm
ここに昨年実績の細かい数字が並んでいるのだが、私が関心ある「洋楽」に限ると、売上枚数で昨年比98%、売上額で97%。まあ、ほぼ昨年並と言っていい範囲だろう。ということは足を引っ張っているのは邦楽のほう。それでも枚数では昨年比95%といくらかマシで、売上額が88%と落ち込みが大きい。
ふと横を見ると「新譜数・カタログ数」「デビュー歌手数」なんてリンクがある。で、これを見ると歴然。
http://www.riaj.or.jp/data/others/n_catalog/arec_n2.html
http://www.riaj.or.jp/data/others/debut.html
CDアルバムの新作発売タイトル数。1996年の16,385タイトルから徐々に減少して、1999年15,208から2000年に12,573と激減。その後も更に減少を続け、2002年は11,152タイトル。全盛期の68%、ざっくり言って3分の2である。ついでにデビュー歌手数というのを見てみると、これも1993年の417からだんだん減って2002年には199。半分以下だ。
つまりは、レコード会社が新人を発掘し、売り出す努力をしなくなり、発売するアイテム数を減らして“売れるものだけを売る”方針でボロい商売をしようと狙った結果、売上が落ちてきたという当たり前の結果が、ここに並べられたデータが物語っているのだ。これは俗に
自業自得と言う。
もうひとつ、洋楽という視点では見逃せないデータが、「輸入版」の数。
http://www.riaj.or.jp/data/others/disk.html
時系列データにはなっていないのだが、昨年比の割合は書いてある。アナログ(12インチのことだろうね)は別としてCDだけで見ると、アメリカからは2002年に1,108万枚を輸入。前年比116%。めちゃめちゃ順調に増えてるやん。対イギリスも541万枚で111%。欧米以外でも、対韓国は627万枚で140%、香港は874万枚で154%。
全然売上落ちてないんですけど。
これだけ細かくデータを公表している日本レコード協会。CDの売上が落ちている2大原因のひとつが「不正コピーCDの増加などが原因」だと分析するなら、いったいどの数字をどう解釈すればそういう結論が導き出せるのか、説明して欲しいものである。
posted by しんかい at 20:22| 東京 ☀|
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