2005年02月20日

年間投票 その3

いやー忙しい。やっぱ平日は更新がまったく手につかないね。会社からアクセスできれば、夜中の残業中とかに10分間時間つくって、ちょこちょこした書き込みはできるんだろうけど、近頃の情報産業は何かと厳しくて、会社のネットワークからはこういうお遊び系サイトにはアクセスできないんだよね。

さて。年間投票NON-TOP40の続き。

5.Mr. Brightside / Killers
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アメリカでも今年になってからトップ40入っちゃったんで次回の年間投票でも入れることになりそうだけど。実は投票集計結果では同じキラーズの「Somebody Told Me」がけっこう上位に入ってたんだけど、私はあれは全然いいと思わなくて。80年代っぽいと言われるバンドはたくさんある。確かに、部分的に色んな80年代バンドの影響は色々感じさせる。キラーズも80年代風バンドのひとつなんだが、じゃあこんな曲やってたバンドが80年代にいたか?具体的に名前挙げてみ?と思っていた。しかし自分でよく考えてみたら楽曲的にはキュアーとかがやってそうな気がしてきた。「Just Like Heaven」とか「High」とかの一環で。あ、だから俺この曲好きなのかも。ものすごく自己完結だが。

4.Stand Up Tall / Dizzee Rascal
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ディジー・ラスカルはラップという文脈で聴いてしまうとあまりにも異質なので、ガラージの流れで、あくまでも「クラブ・シーン」のひとつとして捉えるべきだろう。あのすっとんきょうな声も慣れないとふざけてるようにしか聴こえないと思うが、高速のエレクトリック・ビートに載せてひっくり返ったような声でコロコロとライムを乗っけていくこの曲は凄い!自分も知ってる英語という言語のはずなのに、ほとんど何言ってるのかわからないのも凄い。

3.I Believe In You / Kylie Minogue
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真面目に聴き込んでしまうとけっこうショボい曲だったりもするのだが、「Red Blooded Woman」「Chocolate」と比較的地味ながら質の高いシングルヒットを連発したカイリーの曲をどれか入れておきたかったので、やっぱり代表曲となるとこれかな、と。2004年を代表するバンド、シザー・シスターズと絡んでるという意味でも(シンガーのジェイク・シアーズとキーボードのベイビーダディが作曲+プロデュース)。
ここ数年の「復活」後のカイリーは一流スタッフ製作による完成されたサウンドで、いつでも必ずイケてる音を出してる必要があった。その緊張感をふっと抜いて、ともすると80年代的B級感さえも漂うこの曲を取り上げたのは、ベスト盤向けの新曲だからこそできたことなのかもしれない。「I, I, I believe in you...」というサビの旋律が絶品。2分を過ぎたところ、及び終盤で「I believe in you, I believe in, I believe in you, I believe in...」と一単語ずつ区切るように歌う部分で「カイリーらしさ」を表現した遊び心もいい。

2.Week In Week Out / Ordinary Boys
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これはもう理屈を越えている。イントロのギターのかっこ良さ!歌が始まる直前にちょっとだけトーンダウンして仕切り直すギターがまたかっこいい!ジャムだスミスだと色々言われた割にはあまり評価の続いていないバンドだが、私はとてもイギリスらしさを感じさせてくれる大好きなバンドだ。音楽的にうんぬんと言うより、その音の「鋭さ」が怒りまくっていた頃のポール・ウエラーや、レイ・デイヴィスや、モリッシー&マーと同じなのだ。怒りを表現しつつも、どうせならそれをカッコ良く見える形にする。それが「ロック的なカッコ良さ」ではなかったか。わざとそのカッコ良さをぶち壊して見せるのも最初はインパクトがあったが、今やそんなのは見てて惨めなだけ。やっぱロックはカッコ良くなきゃ。ルックスがほんとにOrdinary Boysなのが惜しい。これでルックスも良かったらもっと大ブレイクしてたんじゃないか。

1.Love Machine / Girls Aloud
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と、この流れで来て、1位がガールズ・アラウドってのもアレですが、とにかく名曲なので。
UKアイドルポップスを聴かない人には全然ぴんと来ないかもしれないが、このところUKアイドル勢による60年代テイストの曲に名曲が多い。少し前だとエマ(元スパガ)が「Maybe」という名曲をヒットさせた。オーディション番組出身のガールズ・アラウドもデビュー当時からロカビリーっぽさを取り入れたり、60年代風の音を意識していた。04年に登場したマクフライという子供バンドもロカビリー/ヒルビリー路線かと思ったら、シングルを重ねるに従いビーチボーイズ風だったりポール・マッカートニー風だったりして、まったく侮れない。
そしてこの曲。ヒルビリー風の大胆なアレンジもいいが、どんどん展開していく曲構成が見事。これはスパイス・ガールズの「Wannabe」の再来と言ってもいいぐらいの完成度だ。イギリス以外でどうしても人気が出ないようだが、それは単にまじめにプロモしてないだけのことだと思うので、アメリカ進出は難しいとしても日本では何とかしようよ。「The Show」もよくできた曲だし、ポインター・シスターズの「Jump」のカバーも悪くない。

というわけで、次回からはアルバムを。
posted by しんかい at 14:47| 東京 🌁| Comment(1) | TrackBack(8) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月14日

年間投票 その2

少し間が開いてしまったけど、年間ベスト選考の続き。
今回はNON-TOP40シングル部門。

10.Drop The Pressure / Mylo
実はこれ、投票が終わってからアルバム聴いたんだけど、イイ!投票前に聴いてれば確実に入れたのに、惜しいなあ。なかなか置いてなかったんだもん。とりあえずこの曲に関して言えば、「グルーヴィでカッコいいダフト・パンク」だ。
私にとってテクノ系のグループは、「グルーヴ感」でその評価が決まる。だから、肉感的なグルーヴ感がなく、いかにもオタクが「頭」で作りました、という感じのケミカル・ブラザーズなんかはかなり嫌いで、その対極として、頭よりとにかく先に体で感じる初期プロディジーなんかは大好きだったりする。
モービーは一時期評価していたが、それはアップの曲ではなく、スローな作品を一種のプログレとして楽しんでいただけだし、ダフト・パンクやファットボーイ・スリムなんかはもっぱらビデオクリップしか面白いと思わない。
そんな私も納得したのがこの曲。テイストは非常にダフト・パンクに似ている。しかし決定的に違うのは、肉感的なグルーヴだ。聴いていて実に気持ちいい。

9.Thunderbirds / Busted
いい加減飽きてるんだが、一時期やたら好きだったので。「Who's David」とか他の曲も好きなんだけどね。密かにハズレ曲がないのでお気に入りのグループだったんだけど、解散は残念。
どちらかというとこれは「聴く」より「歌う」機会の多い曲だったような気も。CD持ってないし。

8.Last Train Home / Lostprophets
この曲以外は全然好きなバンドではないんだが、やっぱりこのサビは何とも抗し難く気持ちいい。初めて聴いた時は実際のサビの前の部分をサビだと思い込んでいたので、あの一瞬の間を置いて「And we sing〜」と始まる本当のサビには一発でやられた。これだけルックスがいいのに何で日本でもっと人気出ないんだろう。単に真面目に売ってないだけか?

7.Call Off The Search / Katie Melua
これは、ちょうど1年ほど前、ロンドン出張に行ったときに買ってきた。ほとんど観光する時間もない強行スケジュールだったけど、朝10時の開店とほぼ同時にVirgin Megastoreに駆け込んで買ってきたわけですよ。ああ、ちょうどBrit Awardsの翌日だったなあ。
アルバムが1位になってたんだけど全然情報が入ってこないし、ヒット曲らしいヒット曲も出ないし、こいつは何者なんだろうとずっと気になってて、ようやく手にしたら自分好みの音だったのでめでたしめでたし。
ジャズとフォークの中間というか。その中でもほわ〜んとドリーミーな、お伽噺の世界みたいなこの曲は彼女のロリ声も堪能できて絶品。

6.Irish Son / Brian McFadden
これはある意味掘り出し物。ブライアン君は、あの元ウエストライフの彼です。
まあ、ウエストライフなんてのは、我々の年代の男性から見れば「ウザい」存在でしかないわけで。「My Love」とか名曲もあるけどね。
で、当然、ブライアンが脱退してソロになるなんて言われても何の興味も示していなかった。全英No.1のデビューシングルもダルいバラードだったし。しかし。2曲目のヒットであるこの曲で、ハッとした。何だ。こいつ、こんなことがやりたかったのか。だからウエライ脱退したのか。ちょっと、目から鱗だった。
彼が育ったダブリンへの愛情に溢れた曲。そして、宗教というデリケートなテーマを全編で扱う非常に意欲的な曲だ。何よりも、この爽やかで屈託のない曲調。いわゆる「ロック」な人々なんかよりよっぽどいい味出してるじゃん。
と、すっかり彼を見直した曲。アルバムも全体的にこの感じを期待しても外さない。

5位以上はまた改めて。
posted by しんかい at 02:08| 東京 ☀| Comment(7) | TrackBack(8) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月06日

2004年年間投票その1

meantimeの年間投票を終えた。2004年の音楽からシングル、アルバムそれぞれベスト作品を選出するこの企画。アルバムについては、既にここでレビューしたものを多く選んでいるので、たまにはここでシングルの話を。
meantimeではシングルの投票を、全米チャート(Billboard HOT100)で40位以内に入った曲を対象とする「TOP40部門」と、それ以外のすべての曲を対象にする「NON-TOP40部門」に分けている。私は基本的に全米チャートが基本の人間だったので毎年、当然のように「TOP40部門」を選ぶのに気合いを入れていたわけだが、今年ほど「TOP40部門」を適当にすませてしまった年はなかった。NON-TOP40部門に比べて、「好き」な曲がなんと少ないことか。

TOP40部門
10. Welcome Back / Mase
9. So Sexy / Twista feat. R.Kelly
8. Slow Jamz / Twista feat.Kanye West & Jamie Foxx
7. Let's Go / Trick Daddy feat.Lil Jon & Twista
6. Happy People / R.Kelly
5. Salt Shaker / Ying Yang Twins feat.Lil Jon & The East Side Boyz

こんなに偏った選び方をするのは、私には珍しい。ここまででトゥイスタが3回も登場!リル・ジョン、R.ケリーも2回。要は、好きな曲が少ないので、好きなアーティストで選ぶしかないのだ。ま、このあたりに並べたのは、そうは言っても好きな曲だけどね。9位はアルバムバージョンではなくリミックスであることが前提。

4. Are You Gonna Be My Girl / Jet
3. If I Ain't Got You / Alicia Keys
2. Oye Mi Canto / N.O.R.E. feat.Daddy Yankee, Nina Sky, Gem Star & Big Mato
1. My Place / Nelly feat.Jaheim

この4曲は、5位以下に比べるとレベルが違う。選ぶタイミングによってはこの4曲のうちどれを1位にしてもおかしくなかった。順当に考えればアリキーがいちばん「いい曲」なのだが、自分らしい特徴を出した投票をしようと思えばノリエガだし、じゃあネリーは他より劣ってるのかというとそういう気もしないし、ロックな気分の時なら間違いなくジェットだし。というわけで同率1位みたいなもんか。

この中で普通の人はあまり上位に選ばないのはノリエガだろう。しかしこのテキトーなノリの気持ち良さは何にも代え難い。もともとノリエガって全然巧いラッパーだと思わないのだが、見たくもないのに来日公演を見てしまって以来(話せば長いが、キャッシュ・マネー軍団を見にいったら彼がいた。キャッシュマネー軍団はドタキャンした)、何となく贔屓している存在ではある。
別にラテンには何の縁もないはずだが、今回いきなりラテン風味の、スペイン語を交えた曲をヒットさせてしまう、この適当さ。ノリエガのチンピラ風キャラがこの適当な雰囲気に絶妙にマッチする。一発屋として消えるはずだったニーナ・スカイを意味なくフィーチャーしたり、ダディ・ヤンキーという逸材を発掘したり、何かと興味深い曲だ。ダディ・ヤンキーは自分名義で「Gasolina」という曲をヒットさせていて、これまたシビレる。「ダ!ディ!ヤン!キー!!」と盛り上がるハイパーなイントロがやたらかっこいい。
しかしノリエガはいつこの曲の入ったアルバム出すんだ。すっかりタイミング逸してるぞ。というわけでここではダディ・ヤンキーのアルバムのリンクを載せてしまおう。あと、まあ、お馴染みではあるが、1位に選んだので、ネリーも。

DaddyYankee.jpg Suit.jpg

NON-TOP40部門についてはまた機会を改めて。
posted by しんかい at 03:33| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月31日

Think On Your Feet by Jaimeson

ThinkOnYourFeet.jpg

2ステップって大好きだった。あの、洗練されたスマートな感じがいかにもヨーロッパ的で、アートフル・ドジャーもクレイグ・デイヴィッドも本当によく聴いた。流行がガラージっぽい方向に進むと、2ステップは物足りないぐらいにあっさりその姿を消していく。アートフル・ドジャーは実質的に解散、クレイグ・デイヴィッドはセカンドアルバムで自ら違う路線に進んだ。

久しぶりにその気持ち良さを再び経験させてくれたのが、UKのプロデューサー、ジェイマソン。「True」(4位)「Complete」(4位)「Take Control」(16位)と続いたシングルヒットはどれも外れなし。これら3曲に加えて、間違いなくアルバムのハイライトとなる「Selecta」が連なるアルバム導入部のかっこよさは圧巻だ。
冒頭から3曲アップが続いて、4曲目でちょっとゆったりしたイントロが流れるのでこの辺で一休みかと油断すると、40秒経ったところで一転して今まででいちばん速い超ハイパーな高速ビート!くー気持ちいい!
しかし次の曲からは本当にスローな曲が登場したりして、だんだんダレてくる。アップの曲ももちろん登場するが全体的に冒頭の質には及ばず、聴けるのは「Thinking Of You」「Better You Know」ぐらいか。
まあ、もともとこの手の人達はアルバムではなくシングル勝負の世界なので、こういう構成になってしまうのも仕方のないところだろう。アルバム全体として高く評価することはできないが、何曲かは03年から04年にかけて最もカッコいい曲だったとは言える。

HMVだかタワレコだかのフリーペーパーではディジー・ラスカルと共に何とかという新ジャンル名の下に一緒に紹介されていたが、ディジー・ラスカルはソー・ソリッド・クルーなんかのガラージ系やエレクトロニカ系からの影響が強く、猥雑な感じがするのに対し、こちらのジェイマソンはあくまでも洗練されてスマートで、やっぱり2ステップからの影響が強い。別モノだと思う。
posted by しんかい at 01:09| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Van Lear Rose by Loretta Lynn

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御年70の婆さんの復活作である。
70。ほんとか?というのが、実際に聴いて誰もがまず思うことだろう。この、張りのある声。どう聴いてもこの声の向こう側にしわしわの婆さんの姿は想像できない。いや、しわしわじゃないのかもしれないけど。

1935年に炭坑夫の娘として生まれた。1949年に結婚。その時、彼女は僅か13歳だった。普通の主婦として4人の子供を育て、やがて彼女はギターを持ち、ローカル・クラブでのパフォーマンスを始める。インディでのレコード契約を手にしたのは1960年。
デッカとの契約を手にし、60年代前半にホンキートンク・シンガーとして数々のヒットを放つ。60年代後半になると、それまでカントリーの世界で聴かれることのなかったフェミニスト的な視点から歌詞を書くようになった。70年代にはコンウェイ・トゥイティとコンビを組んで幾多のヒットを放ち、1980年には彼女の自伝が映画化された。ここまでが、彼女のアーティストとしての、いわば現役時代。1982年に最後のカントリーチャートでのトップ10ヒットを放ち、以後はヒットから遠ざかった。
93年にドリー・パートン、タミー・ワイネットと組んで「Honky Tonk Angels」としてレコーディングしたり、2000年にもアルバムを出していた。しかし、それほど大きな話題になることはなかった。
だから、前作から5年ぶりの作品なのに、大げさに本作がカムバック作だと騒がれたのは、単に期間の問題ではない。彼女が存在感を取り戻したという意味での、第一線への復帰作なのだ。

ホワイト・ストライプスがロレッタ・リンの「Rated X」をカバーした。それを知ったロレッタは自宅にホワイト・ストライプスの二人を招き、ジャック・ホワイトをプロデューサーに迎えて新作を作ることに同意した。だからと言ってジャックに主導権を奪われてしまっているわけではない。1曲を除いてすべてロレッタ自身の書き下ろしの新曲。音も、基本的にはトラディショナルなカントリーだ。しかし随所で、非常にロック的な、荒々しいぐらいにイキのいい演奏が聴かれる。この辺でジャックが本領発揮している。この関係は、ジョニー・キャッシュの復活にリック・ルービンが一役買ったのに非常に似ている。
若く、才能があって、しかも曲者のジャック・ホワイトと真っ向から取り組み、まったく負けていない70歳の婆さん。
なんだか悔しいぐらいに「アメリカの底力」を見せられているような気分になる。いやぁ、これは、凄い。
posted by しんかい at 00:28| 東京 ☁| Comment(1) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月23日

Do I Speak For The World by Gerald Levert

DoISpeakForTheWorld.jpg

日本で、というかR&Bマーケット以外では誰も話題にしないんだけど、コンスタントに活動し、R&B界では毎回しっかり売れる人。ルーサー・ヴァンドロスなんかもそんなところは多少あるが、その人気格差は、この人ほど酷くはなかろう。
ジェラルド・レヴァート。

80年代から活動するR&Bシンガー。紛れもない実力派シンガーだが、その「もっさり感」がよくないのか、日本ではまったく誰からも相手にされない。R&Bってのはやっぱりどこかオシャレだったりエロだったり、セックス・アピールがモノを言う。残酷なようだが、男の色気ムンムンだったテディ・ペンダーグラスが交通事故で下半身不随になった途端に急に魅力が無くなってしまったのは、R&Bというのがそういう音楽だからだと思う。
そういう意味ではジェラルド・レヴァートの存在というのは微妙である。世の中色々好みがあるにせよ、熊系の顔も、丸い体型も、決してかっこよくはない。これまでのジャケ写を見ればわかる通り、それは本人も充分に認識していて、変にかっこつけようとはしていない。
音楽的にも、彼の音楽は決して流行の音ではない。一応その時々でそれっぽいものを取り入れてはいるが、彼の音がその流行の中心に位置づくことはない。その中途半端なところがまた、日本で彼の人気が出ない理由だった。しかし今回はまったく流行を追いかけていない。基本。これでハズシようがない。

今回はインタールードを随所にはさんでアルバムの一体感が高まった。ミディアム〜スローが多いのはいつも通りの構成。
それにしても、なんでこれが売れないんだろう!というぐらい、質が高い。すべての曲が平均点以上の出来だ。実は彼の作品は94年の「Groove On」以来6作連続でR&Bチャートで最高位2位が続いていたのだが、前作「Stroke Of Genius」がそれを打ち破って1位になった。にも関わらず今回は7位。ちょっとまずい。しかし、質は決して落ちていない。80年代の、「ブラック・コンテンポラリー」と呼んでいた頃の曲のような「Better To Talk It Out」の美メロコーラス。「Lay You Down」のゴージャスでスケールの大きいサウンド。この極上のメロディもボーカルも、すべては女と寝ることを懇願してるだけ。いや、これでいいのだ。これがR&Bの世界。70年代ソウルのようにコブシを効かせまくって「お前に子供ができたって気にしないぜ、お前が欲しいんだ」と熱唱する「So What (If You Got A Baby)」。やっぱR.ケリーなんかとはシンガーとしては格が違うと思い知らされる。「未婚の母」が当たり前の社会なので言ってる内容は全然日本人の感覚と違うので意味わかんないかもしれないけど。

正直なところぱっとしない作品も多い彼だが、今回のは、はっきり、いいアルバムだと言い切れる。これは聴く価値あり。
posted by しんかい at 22:57| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(1) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Bebel Gilberto by Bebel Gilberto

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私はどうも昔からオシャレな音楽が苦手だった。
苦手と言うよりは、偏見を持っていたというほうが近いだろう。
洋楽の聴き始めがロックで、その後ラップにはまり、トゥ・ショートだのゲットー・ボーイズだのスリー・シックス・マフィアなんてのをフェイバリットに挙げるような人間としては、まあ当たり前の反応とも言えるだろう。
しかし最近それがどんどん無くなっていってるのが自分で実感できる。
仕事でアジアの人々と接し、現地に頻繁に足を運ぶようになて、アジアの文化に対する偏見がなくなった。回り道だが、そこを経由してから、日本の音楽にも最近は普通の接している。
ワールドミュージックでもレゲエの類、アイリッシュやフレンチ、スペイン語圏のラテンやアフリカなんてのは昔からそれなりに興味をもって接してきたし、これで全ジャンル制覇か。
と思ったが、まだひとつ、まったく手つかずの領域があった。ボサノバである。

どうもボサノバ=J-WAVEで昼間かかってるオシャレなBGM、というイメージができてしまっていた。音楽が好きだから音楽を聴く人ではなく、オシャレで音楽を聴く人が聴くもの、という偏見をもっていた。

ベベウ・ジルベルト。ジョアン・ジルベルトの娘。この4年ぶりのアルバムは、英米の作品を中心にセレクトしているようなところでも、2004年のベストアルバムの1枚にリストアップしてたりするように、非常に世間の評価が高い。
こりゃ、ボサノバの世界の入り口としてちょうどいいじゃん。と思って聴いてみた。
すぐそこで歌っているかのような息づかいが伝わってくるベベウの温もりのあるボーカル。素材を活かすための最低限の味付けに留められた演奏。ゆっくりと時間が流れる、リラックスした空気。とても心地いい。だがやっぱりJ-WAVEで流れてそうだという印象自体はあまり変わらない。聴くシチュエーション次第ではもうちょい印象良くなるんだろうけど、やっぱ今のところこれは私が好き好んで自ら聴くものではなさそうだ。
posted by しんかい at 20:51| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月03日

Sex, Love and Rock'n'Roll by Social Distortion

Sex Love and Rock N Roll

演歌パンク。今私が勝手に名付けただけだが、ソーシャル・ディストーションの音にはそんな表現が似合う。
カリフォルニア州オレンジ・カウンティは90年代前半ぐらいに、新世代のバンドが次々に登場してくる地として注目されたが、それ以前からパンクバンドの名産地だった。1978年結成、83年にアルバムデビューしたソーシャル・ディストーションはその中でも古株のひとつ。バンドとしては96年以来長らく活動休止状態で、フロントマンのマイク・ネスがソロアルバムを出してからももう5年が経っている。

カリフォルニアのパンク・バンドの特徴は、パンクというスタイルにこだわらずに他にカッコいいと思うものがあればそれをどんどん取り込んでしまうところだろう。サブライムや311、シュガー・レイといったスカ・パンク、あるいはそもそも分類が難しい音を出すバンドが次々に出て来たのもその土壌のおかげだろう。

そんな中でソーシャル・ディストーションが影響を受けたのはカントリーとロカビリー。カントリーと言っても今のチャートに登場するようなポップ・カントリーではなく、もっとドスの効いたアウトローっぽいやつ。やっぱジョニー・キャッシュは彼らのヒーローだろう。マイク・ネスのソロアルバムでそのルーツがはっきりと示され、それを経たバンドとしての最初の作品が本作である。

すべての曲は、アコギ一本で歌い直してもサマになるだろう。それだけメロディがしっかりしている。革ジャンをびしっと着て、髪をオールバックでぴっちりと固めたマイク・ネスが、ドラ声を張り上げて演歌的な哀愁のメロディを歌う。ある種の様式美の世界。何も新しくなく、以前の作品と何が違うでもない。それでもこの声と、ちょっと荒っぽいこの疾走感のあるロックが聴ければいい。そういうファンのためのアルバムだ。「何か」がなければ評価するわけにはいかない評論家には、従って、決して取り上げられることはないだろう。
そんな事には目もくれず、ルックスにしても音にしても、ただカッコいいことを追求し続けるマイク・ネス。長年のドラッグ癖を克服した彼の思いが、アルバムタイトルを「Sex, Drugs and Rock 'n' Roll」という馴染みのある言葉ではなく、「Sex, Love and Rock 'n' Roll」にさせた。不器用だけど、一途でまっすぐな男のカッコいいロック。10曲で38分という、物足りないぐらいのボリュームで、ちょうどいい。
posted by しんかい at 01:10| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月02日

Kamikaze by Twista

Kamikaze

まったく隔世の感がある。ドゥ・オア・ダイにフィーチャーされた「Po Pimp」という曲でトップ40にちょこっと顔を出し、「どうやらギネス認定の世界一の早口ラッパーらしい」という噂だけが伝わってくるアングラな存在だったトゥイスタ。ルックスにもスター性はなく、彼がジェイZ、デーモン・ダッシュらRoc-A-Fella勢からラヴコールを受けているというニュースを聞いた時も、今度こそ売れるかと感じさせはしたものの、まさかこんなブレイクは誰も予想していなかっただろう。

実際にはRoc-A-Fella移籍はならず、Atlanticからの登場となったが、とにかく大ブレイク寸前のカニエ・ウエストと組めたのが良かった。ほとんどの一般人が初めてトゥイスタに接したであろう「Slow Jamz」の構成も素晴らしかった。第一ヴァースをカニエに任せた後、女とカニエが寸劇で「もっと早くやってよ」「これ以上早くできないよ」というやりとりをして、その直後に割り込んでくるトゥイスタの速射砲。あ、これが例のギネスの奴か、とみんなの印象に残る、実に鮮烈なメジャーデビューだった。
カニエ・ウエスト製作の「Slow Jamz」「Overnight Celebrity」、更にはR.ケリー製作の「So Sexy」とシングルカットして、シカゴ人脈をフル活用しつつ、雑誌に「今シカゴが熱い!」なんて特集を組ませたりもした。
しかし実はアルバムの半分近くを手がけているのはトキシックという奴であり、アルバム全体のカラーを特徴づけているのはこの人物である。これが、実はなかなかキレる。元グッディ・モブのシーローを迎え、アウトキャスト所有のアトランタのスタジオで録音された「Hope」。柔らかく温かいトラックに乗せ、ゴスペルのようなコーラスが、何とも言えない心地よさを醸し出す。この幸せ感はなかなかヒップホップ系の奴に出せるものではない。アリーヤ、ジャム・マスター・ジェイら故人に捧げられているというところもしんみりさせるし、R.ケリーのプチ・パクリっぽい「I Wish」というコーラスも何だかいい感じだ。

現在アトランタを拠点にするトゥ・ショートとエイトボール&MJGを迎え、南部のブルージーな泥臭さを漂わせる「Pimp On」や、デス・ロウ出身のダニー・ボーイを迎えてウエストコースト風のぴーひょろしたシンセを絡ませてレイドバックした「Snoopin'」(これってスヌープ・ドッグのことなのか?)など、いちいち質が高い。色んな有名プロデューサーをとっかえひっかえ使ったゴージャスな作品にしたかった気持ちはわかるが、トキシックとがっちり組んだ作品にしていれば、全盛期のダンジョン・ファミリー関連作品に通じるような、かなりいい仕上がりになったのではないかと思わせる。ま、それじゃ売れなかっただろうけどね。
次作は間違いなく今回のようには売れないだろうが、そういう意味ではまたインディ落ちして、地元の、付き合いの長い連中と地に足のついた作品を出してくれることを期待したい。
posted by しんかい at 23:54| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年01月01日

The Grey Album by DJ Danger Mouse (Jay-Z + The Beatles)

Grey Album

ネット上の音楽の世界で昨年いちばん話題になったのはこの作品だろう。
DJデンジャー・マウスの「The Grey Album」。
ジェイZの「The Black Album」と、ビートルズの「The Beatles」(通称ホワイト・アルバム)を勝手にリミックスした、いわばネット上のミックステープである。インターネットを、音楽など自分の芸術表現の場として、世界中のファンと直接コミュニケーションできるという特質を活かしつつ、活用しているアーティストは多い。彼らはまったくの自作曲を公開することももちろんあるし、まったく異なる複数の音源を組み合わせて新しい「曲」を作る、「マッシュアップ」と呼ばれる表現形態もポピュラーである。この「Grey Album」はまさにマッシュアップの典型的な作品だ。

ビートルズを使っていると言ってもけっこう凝った使い方がされており、一聴してすぐにカバーだと判るような単純な使い方はされていない。その完成度の高さが話題になる一方、やっぱり「ビートルズの音源」というところが別の意味で話題になった。EMIによるビートルズの音源の管理は厳しい。正規ルートのサンプリングにもなかなかOKは出さないわけで、ましてやこんな海賊音源なんて真っ先に取り締まりの対象だ。当初プロモ盤CDで流通したこの音源はすぐにEMIにより差し止められたが、既に音源はネット上に流通していた。

デジタルコンテンツが音楽ソフトの中に占める割合が高まるにつれ、著作権の考え方も変わって来ているが、まだまだ過渡期にある。サンプリングとは/著作権とは/改変権とは/芸術とは という根の深い話になってしまうのでここで深入りはしないが、とにかくEMIの“取締り”に真っ向から対抗する勢力も少なくなかった。彼らは「Grey Tuesday」というプロテスト活動を組織し、音楽メディアはもちろんNew York Timesなどのメジャー紙も巻き込んで論争となった。

そういう話題性もあるのだろう。Qでは2004年ベストアルバムの15位に、NMEなんか6位に、この正規発売されていないアルバムを選出している。

ところで、「Black Album」と「White Album」をかけあわせたと単純に言うが、実態としては「White Albumの音源をサンプリング源としてトラックを製作し、Black AlbumのジェイZのラップをのせたもの」である。その前提として、こんなものが存在する。「The Black Album Acappela」。日本のamazonでも普通に買える。私は米amazonで中古で安く出てるのを見つけて速攻ゲットしたのだが、別に貴重なものでもなさそうで少し残念。ラップのトラックだけじゃなくコーラスとかバックのかけ声とかも入ってるので、けっこう聴いると不気味な曲もある(←別に聴くものではない)。

Black Album Acappella

その名の通り「The Black Album」からボーカルトラックだけを抜き出したもので、これはどう考えても「聴く」ためのものではなく、素材として「使う」ためのものである。ジェイZは自らこんな素材を提供し、マッシュアップを推奨していた。「The Grey Album」及びその後を追って無数に登場した「Black Album」のマッシュアップ作品は、ジェイZが意図した通りの、必然の結果なのである。

で、「Grey Album」の中身はというと... やっぱプロの、今が旬のトラックメイカーたちの作品にはかなわないよね、ってことで「The Black Album」と出来を比較してはいけない。ひとつの試みとして面白いとは思うが、やっぱり聴いててカッコいいとはあまり思わなかった。
「Grey Album」の音源はここでダウンロードできます。
http://www.illegal-art.org/audio/grey.html
posted by しんかい at 02:30| 東京 ☔| Comment(6) | TrackBack(2) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年12月31日

Hopes And Fears by Keane

Hopes And Fears

キーン。アルバムを聴いて、これは自分にとっての年間ベスト作品になるだろうと直感した。トラヴィスの「The Man Who」とコールドプレイの「Parachutes」をそれぞれの年の年間上位に選んできた私にとって、これほどツボを突いた作品は今年他になかった。
瑞々しいピアノ・ロック。ボーカル+ピアノ+ドラムという大胆な編成のトリオ。ピアニストがベースは兼ねるが、ギタリストはいない。ギター+ドラムという究極の最小編成をホワイト・ストライプスが示して見せていることもあり、驚くほどのことではないのだが、「トリオなのにボーカルが歌うだけ」というのはロック史上けっこう画期的なことではないだろうか。歴代数々のロック・トリオの大半は、フロントマンがボーカルをとりつつベースまたはギターを弾いていたはずだ。
しかし、それにより彼らの音楽の表現範囲が狭まったり、音に違和感があったり、ということはまったくない。とくに「This Is The Last Time」「Bend And Break」「Everybody's Changing」「Can't Stop Now」といったアップテンポの曲での水が流れるように流麗で、透明感のある音は見事だ。よく伸びるボーカルの声も、アップテンポの曲のほうが活き活きしている。そして、何よりもメロディの良さ。今年出て来たバンドでソングライティング能力はNo.1だろう。すべての曲が印象的なフックのメロディを持ち、その完成度の高さ故にすーっと耳に自然に入ってくる。シングルヒットしている「Somewhere Only We Know」もいい曲だけどアルバム中でいちばんいい曲というわけでもないし、「Bedshaped」のコールドプレイ的なドラマチックな盛り上がりは、どちらかというとアルバムでは異色だ。彼らの瑞々しくきらめくようなセンスは、先に並べたアップテンポの曲群で確認されたい。

トラヴィスの例を見るまでもなく、残念ながらこういうバンドは、次作以降はセルフ・パロディに陥り、面白みを失っていきがちである。これだけ素晴らしい作品を残してくれただけでも感謝すべきだが、願わくばもう1枚か2枚ぐらい、長く聴き続けるに値する作品を出してくれるといいな。
素直すぎるのでNMEではあまり受けはよくないが、Qでは堂々年間2位に選出されている。
posted by しんかい at 22:56| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Confessions by Usher

Confessions Confessions New
左が最初に出ていたバージョンで右が出し直し盤。以下は左のバージョンに基づく。買い直すのは悔しいので私は右側バージョンは未聴。今から買う人は「My Boo」も入った右のほうがお得でしょう。


なにもそこまで売れなくていいんだが。というぐらい売れまくってしまった2004年のアッシャー。それにしても「Yeah!」が年間チャート1位って。数十年後の人たちはいったいこれをどう評価するだろう。

デスティニーズ・チャイルドのアルバムもそうだったが、先行シングルで出てくるのは派手な曲だが、アルバムはオーソドックスで安定した曲で固められている。アップテンポの曲は「Yeah!」のほかは「Caught Up」「Take Your Hand」のみで、これ以外は全編がミディアム〜スローで固められる。
ジャスト・ブレイズ製作の「Throwback」が白眉。ロックっぽい音を使いながら、いかにもアッシャーらしいメロディが流れるように展開していく様は見事。さすがにアッシャーのこの特質をしっかり押さえているのは、文字通り彼が子供だった頃から育ててきたジャム&ルイス。「Truth Hurts」「Simple Things」などの好楽曲を提供している。しかし前作での「Twork It Out」のようなアルバムのハイライトに成り得るようなパワーはなく、「Bad Girl」なんか、これってジャスティンじゃないの?とちょっと失笑してまうようなところも。
ジャーメイン・デュプリも流石にアッシャーと組むとなるといい仕事していて、「Burn」もいいがブラマコ(ブライアン・マイケル・コックス)と組んだ、いかにもアルバムの終盤に入ってそうな解放感のある「Do It To Me」もいい感じだ。
しかし「Take Your Hand」での勢いのある歌いっぷりを聴くにつけ、もうちょっとアップテンポの曲があってもよかった気はする。これで800万枚売って、2004年にアメリカでいちばん売れたアルバムになってしまうんだから、これで戦略は間違ってないんだろうけど。私は前作のほうが好きだったな。
posted by しんかい at 02:27| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(2) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Franz Ferdinand by Franz Ferdinand

Franz Ferdinand

ここ数年、トレンド・セッターとなるロックバンドはみんなアメリカ出身だった。ホワイト・ストライプスも、ストロークスも、最初に認めたのはイギリス人だったけど、アメリカのバンドだった。
だから、フランツ・フェルディナンドがグラズゴーから登場してきた時は、イギリスの音楽評論家たちは本当に嬉しかったんだろうなー、と思う。NMEで1位、Qで3位など、イギリスの音楽雑誌が選出する年間ベストアルバムで軒並み極めて高い評価を得ているのも、ある程度「地元びいき」によるものだろう。

ストロークスがそうであったように、彼らもまた、決して新しい音を出すバンドではない。基本に忠実というか、60年代のガレージロックの時代に戻ったような音だ。ただ、そういうバンドがごまんといる今の時代、彼らが際立つのは、その洗練された佇まいだろう。何年か前は感情の赴くままに叫ぶボーカルがロック的でかっこいいと勘違い的にもてはやされた時期もあったが、このバンドのボーカル、アレックス・カプラノスは決して叫んだりしない。ほとんど感情さえ見せない。バンドの演奏にもブレがなく、メンバーはアート・スクール卒業生だとかクラシックの経験があるとか聞くとやけに納得できる。
「Take Me Out」を筆頭に「Auf Achse」や「Come On Home」など個々の曲は確かによく出来ているのだが、果たしてこれが2004年のベスト作品だというほど素晴らしいかというと、私はかなり疑問である。良いか悪いかなんてのはしょせん個人の主観でしかないわけで、ここで「よくない理由」をつらつら書いてもしょうがないのだが、一言で言うとカッコよさのベクトルが私の趣向とは違うということなのだろう。私はストロークス派。
posted by しんかい at 01:24| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

By Any Means Necessary by Pastor Troy

By Any Means Necessary

なにもハリー・コニックJr.のあとにこんなの聴かなくてもいいのだが、「何でも聴ける」人であるためには自分に試練を課さねばなるまい。というかそんな大層なことでもないな。けっこう自然に聴いてるよ。

パスター・トロイ。私がもっとも「カッコいい」と感じるお気に入りのラッパーの一人である。素材としてはリル・ジョン並のスターになれる素質をもっていると思うのだが、プロダクションに恵まれていない。今回も有名なプロデューサーはまったく参加しておらず、ローカルのプロデューサーたちの作品が並ぶ。一般論としては別にローカルだからレベルが低いということは全然ないし、ローカル色が強いからこそ味わい深く楽しめる作品はヒップホップの世界には決して珍しくない。というかほんの3年前まで、南部ラップなんて全部そうだったはずだ。
それにしてもこの作品は60点から70点ぐらいの曲が延々と並ぶ。確かにダメな曲はないのだが、これはいい!という曲がない。どうにも煮え切らない。前作の「Are We Cuttin'」で抜群のカッコ良さをみせたティンバランドや、大ブレイク前のリル・ジョンや、ジャジー・フェイなど、前作までの質の高さを支えていた面々が今回は揃って不在だ。有名プロデューサーの力に頼らずに自分に近い仲間と作り上げたいという気持ちはよくわかるが、やっぱりここまで華が一気になくなってしまうのは寂しい。
相変わらずアートワークはかっこよく、タイトルから明らかなように、ジャケ写のポーズもマルコムXを意識したもの。
いつかは南部ラップ史に残る超傑作「Vice Versa」を越える名曲を出してくれるのだろうか。
posted by しんかい at 00:45| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2004年12月30日

Only You by Harry Connick, Jr.

Only You

世相がそうさせるのか、あるいはロッド・スチュワートの商業的な大成功がレコード会社の担当者を駆り立てるのか、最近カバー集が多い気がする。
そんな中、ロッドと選曲や企画がいちばんバッティングしそうなのが、このハリー・コニックJr.の作品だった。昨年のクリスマスシーズンに「Harry For The Holidays」が久々にヒットしてちょっと昇り調子だっただけに、本作はチャート上では彼の15年を越えるキャリアで最大のヒット作となった(5位)。

もちろんハリーの場合、これはロッドの真似でも何でもない。たとえば92年の「25」や01年の「30」はジャズ・スタンダードを中心とするカバー集だし、彼のようなジャズ系のシンガーがスタンダード・ナンバーを歌うのは、ロック/ポップス系の人に比べるときわめて自然なことだ。関係ないがこのジャケのハリーはエディ・ヴェダー(パール・ジャム)に似てないか?

オーケストラの指揮からアレンジまで全面的にハリー自身がてがけた本作は、雰囲気的にはいつものハリーの小洒落た雰囲気だ。全編に演奏はかなり控えめで、重厚感はあまりないが、その分ハリーの存在が、近く感じられる。コンサートホールよりはレストランやバーで聴いているような雰囲気だ。ニューオーリンズの大先輩、アラン・トゥーサン作品「All These Things」なんていい雰囲気すぎて、聴いてて意味もなくひとりで照れてみたりなんかして。かつては音楽バカで、音楽を女の子を口説く道具に使うなんてけしからん、なんて思ってたりもした自分が、今はそういうのもアリだよなあ、とか思ってみたり。
そういう文脈で聴くと、ハリーが“近く”に聴こえるこの作品はけっこうヤバい。この“近さ”で「only you can make this world seem right / only you can make the darkness bright / only you and you alone / can thrill me like you do / and fill my heart with love for only you」なんて歌われてしまって、世の女性は平常心で居られるだろうか。
イヤらしさは全然なく、ごく自然に、真摯に歌うハリー。だからこそ漂う爽やかな色気。スタンダード・ナンバーを歌っても枯れた雰囲気にならず、かと言ってこういう歌が似合わないほどに青臭いわけでもない。まだオヤジとして老け込むにはちょっと早い37歳のハリーが、見事に年齢相応の熟れ具合を見せてくれた。
マイケル・ブーブレやジェイミー・カラムなどジャズ系のシンガーにも若手が出て来ているが、これで巧く彼らとの棲み分けもできたし、当分は彼の天下だろう。全米ジャズ・チャート年間No.1おめでとう。
posted by しんかい at 23:59| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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