2005年01月03日

「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」モフセン・マフマルバフ著

Afghanistan

以前少し書いたが、マニラでの国際ワークショップで、アフガニスタンの人と話す機会があった。ITを使う教育に関する内容のワークショップだったのだが、その人にとっては「IT」なんて夢物語のようなものだった。それは言い過ぎにしても、少なくとも彼の国の現状では、まったく現実的な話ではない、という話しぶりだった。

正直なところ私が知るアフガニスタンというのは、80年代にソ連の侵攻を受けたことと、最近アメリカの攻撃を受けたことぐらい。10年に及ぶ内戦、とかいうキーワードを断片的に知っていても、その言葉が本当に意味することをわかっていなかった。
アフガニスタンに関する本を探してもエッセイ集的なものが多く、きちんと彼の国の実情がわかりそうなものがなかなか見つからなかったのだが、この本が面白そうだったので手に取った。

「アフガニスタンの仏像は破壊されたのではない 恥辱のあまり崩れ落ちたのだ」というタイトルには、正直言って引く。しかし、この著者がイランの有名な映画監督で、隣国・イラン人としての立場で色々語っているのに興味をもった。

一般の日本人はアフガニスタンの実情なんて全然わからないのと同様に、イランのこともわかっていない。だから、イランという「安定した」「先進国」がアフガニスタンという「貧しい」国を見る、という視点がとても新鮮だった。山岳地帯が国土の多くを占めるアフガニスタンは天然資源も開発されておらず、産油国であるイランとは豊かさがまったく違う。農業にも適さない土地の住民たちは、従って、他に選択肢もなく、麻薬を栽培する。世界に流通するヘロインの8割が、そして世界のすべての麻薬のうち半分はアフガニスタン産らしい。それでもこの国の基幹産業は5億ドルの外貨しか稼ぎ出さない。麻薬自体は幾多の仲買人の手を経て、数百倍の価値を得て、世界へと流通していく。

そんな麻薬や、あるいは衛生状態の悪いアフガン難民が、自国に良からぬものを持ち込むことを嫌うイランにとって、アフガニスタン人は歓迎すべき存在ではなく、単に難民キャンプに押し込めておいた。
しかし反対側の隣国であるパキスタンは、アフガン難民を迎え入れ、彼らを教育した。教育を受けた者はアフガニスタンに帰国して、国を統治した。それがタリバンである。もともと部族社会であったアフガニスタンを統一したタリバンは、厳しい戒律で秩序を求めた。内戦に終止符を打ち、「安定」を国民に与える代わりに、ルールを守ることを求めたのだ。アメリカを筆頭とする「国際社会」は、これを「人権の抑圧」だと解釈した。ここからアフガン侵攻が始まる。もちろんオサマ・ビン・ラディンなんてのは口実に過ぎない。

この本はイランの映画監督モフセン・マフマルバフ氏の口述に近い雰囲気のレポートやスピーチなどを集めたもの。表現が非常に平易なので読みやすいが、内容はとても重い。「隣人」であるイランが、アフガニスタン難民をいかに迎えるべきか。彼の国にいかに接するべきか。タイトルが詩のようなので誤解を与えると思うが、統計的な数字を使いつつ、変に感情論に走ったりせずに冷静に語られているので安心して読める。
一緒にしてはいけないが、これは日本人がフィリピンや中国などからやってくる外国人労働者にいかに接するか、という立場にも少し似ていると感じた。そして、外国のことを学ぶたびに、いつも、もっと日本のことを知り、日本人としてのアイデンティティをしっかり持たなければいけないと、強く思わされる。

著者本人の言葉ではないのだが、引用されている言葉が鮮明に頭に残っている。スターリンの言葉。
「一人の死は悲劇だが、100万人の死は統計に過ぎない」
posted by しんかい at 03:24| 東京 ☀| Comment(3) | TrackBack(0) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
meantimeのゴシップコーナー、楽しく読ませていただいてます。アフガンの現状は、「ペシャワール会」のHPがわりと詳しいのではないでしょうか。30年ほどあちらで活動をしていて、関連本が出てます。お役に立てば幸いです。
Posted by koyuki at 2005年01月20日 17:39
koyukiさんコメントありがとうございます。
「ペシャワール会」のサイト http://www1m.mesh.ne.jp/〜peshawar/
見てみました。やっぱり現地にいる人からの情報は重みがありますね。
彼らの活動を支える会員制度があるようですが、どうしてこの手のものって、郵便振替以外は受け付けてくれないんでしょうね。ネット決済の仕組みをつくるのって、そんなに大変なんでしょうか?(ってIT業界の人間が言うことじゃありませんが)
今の世の中、「寄付」に「手続きが面倒」なのは致命的だと思うのですが。というか営業時間内に郵便局に行く時間なんてみんなあるのだろうか。どうすればいいんだろう。家族に頼んだりするのか?
いずれにせよ情報どうもありがとうございました。
Posted by しんかい at 2005年01月22日 15:02
しんかいさんこんばんは。

えと、確かに郵便局は昼間暇がないと大変ですよね。口座を持っていれば、郵便局のサイトで電信振り込みができます。ただ、一般にこの手の寄付は振込料が無料のはずですが、サイトで送金すると130円かかっちゃうらしいです。会員になると会報が送られてきて、なかなか他では分からない情報も知ることができます。あと、郵便振替をATMでできる端末もありますよ。お役に立てれば幸いです。
Posted by koyuki at 2005年01月24日 21:02
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