2005年05月15日

「ボロボロになった覇権国家」北野幸伯著

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なんでこんな本買ったんだっけ。
と、読んでいてたびたび思わされた。君達はこんな基礎的なことも知らないでしょうからすべて噛み砕いて、バカでもわかるように書いてあげますよ、という偉そうな態度が随所に感じられて、時々すごく不快になる。
しかし、モスクワの、「卒業生の半分は外務省に、半分はKGBに進む」という外務省付属の大学に留学していたという著者の視点は、確かに鋭い。とくに、西欧とアメリカという、いつも日本人の視線が向いている国ではなく、ロシアと中国を巨大勢力と捉え、戦略的にアメリカを弱体化させようとしている(あるいは弱体化していくのを待っている)という説明はインパクトがある。
小馬鹿にした口調で、何度も話の要点をまとめ直したりしつつ、断定調で語られるので、すっかり騙されてしまう人もいそうだが、話半分と思いつつ読むとけっこう面白かったりもする。田中宇をもっと胡散臭くした感じだろうか。あまり人にお薦めできるような本でもないが、それなりに面白いし、文量が少なくてすぐ読めるので、自分の読書記録という意味もあり、いちおう取り上げてみた。
posted by しんかい at 17:08| 東京 🌁| Comment(49) | TrackBack(7) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「チェチェン やめられない戦争」アンナ・ポリトコフスカヤ

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チェチェンねたは以前も一冊とりあげたが、あれを入門編として読み進めたのがこの本。
著者はロシア人のジャーナリストなので、チェチェンを進攻している側にあたる。それがよくもまあヌケヌケと、と思えなくもないのだが、実際に読んでみるとそんな意地悪を言う気もすっかり失せている。
瓦礫の廃墟と化したグローズヌイに、裏ルートから潜入し、取材だけで終わらず、現地のごく普通の人々の支援をし、軍隊に捕まり、罵声を浴びせられ、放り出される。そんな活動が評価されてロシアのジャーナリスト協会やアムネスティから表彰されたり、02年のチェチェン武装勢力によるモスクワの劇場占拠事件では、交渉役として武装勢力側から指名されたりした。ロシア人としては「話せる奴」だと評価されたということだろう。
チェチェン侵略戦争の背景にうごめく人物や組織について政治的に、そしてもっと泥臭く分析を加えていく後半は、ロシア政界や人脈図について何の前提知識もないとちょっと辛いが、戦時下のチェチェンの一般市民の生活を描いた序盤の重さと、迫力は圧巻だ。「生きる」ということが、どんなに大変なことなのかを、つくづく思い知らされる。

今、別の本を読んでいるが、イスラムがからむと米国や西欧社会はその独立を認めないという。
世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシアから、キリスト教国である東チモールの独立を支援しても、カシミールの独立は許さない。クロアチアは許しても、ボスニアは許さない。グルジアの独立は許しても、チェチェンは独立させない。
日本人は欧米人の言うことしか有り難がらないので、反対側の視点から物を見る事ができない。「国際派」のCNNやBBCが報道することが、公平な「世界のありのままの姿」ではない。
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2005年03月21日

Thirty Three

35歳になった。
四捨五入すると40。心理的に、大きな大きな節目だ。
会社の後輩連中にその話をすると面白がって何かにつけ「しんかいさん35歳なのに凄いですね〜」を連発される。

でなぜタイトルがThirty Threeなのかというと、これは曲のタイトル。スマッシング・パンプキンズの「Mellon Collie and the Infinite Sadness」収録曲で地味にシングルヒットもしているが、やっぱり激しく地味な曲だ。
でも、これが、私にとってはどうにも忘れ得ぬ名曲で。
凍えるような冬の朝のぴりっとした空気のような。太陽が昇って、これから一日が始まるのだという、当たり前なんだけどとても有り難い事実を、あらためて感謝したくなるような。手がかじかむのも、息が白く凍るのも、自分という命が、生きているから。

なんでこの曲が「Thirty Three」なのか、実は、真相は知らない。歌詞には直接登場しないし、1967年生まれのビリー・コーガンはこの曲を書いた時点で28かそこらなので、彼の年齢ではない。
思い当たるのは、イエス・キリストが33歳で死んだということぐらいだ。

自分が33歳のとき、そっと、この曲を自分のテーマ曲にしていた。
それからもう2年も経ってしまったけど、生涯忘れ得ぬ曲であることは間違いない。

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2005年03月07日

英字新聞

仕事が山場だ。家に帰ってもメールさえ開かず、という日が続き、先週はついに一週間近くためこんでしまったり。メールアドレスという物を持って以来、こんなことは初めてかもしれない。知り合いの皆さん、お急ぎの用件は携帯メールへ。

さて。
私は基本的に読書好きだが、読書に集中できる環境というものが限られる。例えば通勤電車なんかはOK。外のコーヒー屋なんかもOK。しかしなぜか自分の家の机だと、ダメなのだ。パソコンが気になったり音楽聴きたくなったり、他に誘惑があるせいだと思うのだが、どうにも集中できない。
しかし電車の中は、新聞を読む時間に充てているので、本を読む時間が本当にない。仕事上の勉強に関係する本も読まなきゃいけないし、単に趣味で読みたいものも色々たまってるのだが。
で、電車の中で読んでる新聞というのが、「The Daily Yomiuri」である。
読売新聞の英字新聞。
実は私も当初はそう思っていた。別に英字新聞なら何でもよくて、とにかく日常的に英語の勉強を続けたいというだけだった。ところがこれには2つメリットがあった。まず、安い。これは意外だったのだが、普通の読売新聞(朝刊のみ)と比較しても安いのだ。月額2650円。一日にすれば100円未満だ。
もうひとつは、コンテンツが読売新聞とはまったく違うこと。具体的には、海外のニュースが圧倒的に多く、深い。日頃から日本の新聞の海外ニュースの底の浅さには辟易していたのだが、Daily Yomiuriの情報量はまさにかゆいところに手が届いた。この1年半ほどアジアを中心に仕事をしていたので、その感覚を身につけるというだけでも充分に役に立った。
ではいいことばかりかと言うと、そうでもない。まず一般家庭にとってイタいであろうことは、チラシが入らないことだ。一体どういう理屈なのかわからないが、英字新聞にはチラシはつけないというルールらしい。スーパーのセールやデパートのバーゲンやお買い得のマンション情報が入ってこないのは、ちょっともったいない。この点はおおいに覚悟しておく必要がある。
実のところ、これ以外にはこれといって悪い点はないと思う。もちろんスポーツ欄も海外(とくにアメリカ)の情報が多いので日本のスポーツに関心がある人は物足りないだろうし、ビジネスという観点では日経を読み続けるのにはまったく敵わない。でも、日経はたいていのビジネスマンが読んでるが、Daily Yomiuriで海外のニュースを収集しつつ英語に触れる訓練を毎日続けてる奴はそうそういない、と差別化することで私は自分を納得させている。
posted by しんかい at 02:16| 東京 ☀| Comment(2) | TrackBack(3) | 思う事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月27日

見逃した人用:あびる優事件

いや別にどうでもいいんだけどね、この事件自体は。
ネット上ではそりゃもう大騒ぎみたいですが。
ただ、関心ないとは言え、これだけ騒がれると気になるじゃないですか(笑)
少なくとも、その「問題」の映像ぐらいは観たいな、と。
ということでこのリンクを貼りたいだけなんだけどね。Windows Media形式でファイル落とせます。
ここを見にくるような「洋楽」の世界の人達は日本の芸能界には疎いんじゃないかという勝手な決めつけのもと、「おー、ちょうどみたかったんだよ」という人がいることを期待。

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あびる優の窃盗事件

なるほど、実際に見ると呆気にとられます。話のタネぐらいにはなるね。
posted by しんかい at 00:18| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(5) | 思う事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月20日

年間投票 その3

いやー忙しい。やっぱ平日は更新がまったく手につかないね。会社からアクセスできれば、夜中の残業中とかに10分間時間つくって、ちょこちょこした書き込みはできるんだろうけど、近頃の情報産業は何かと厳しくて、会社のネットワークからはこういうお遊び系サイトにはアクセスできないんだよね。

さて。年間投票NON-TOP40の続き。

5.Mr. Brightside / Killers
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アメリカでも今年になってからトップ40入っちゃったんで次回の年間投票でも入れることになりそうだけど。実は投票集計結果では同じキラーズの「Somebody Told Me」がけっこう上位に入ってたんだけど、私はあれは全然いいと思わなくて。80年代っぽいと言われるバンドはたくさんある。確かに、部分的に色んな80年代バンドの影響は色々感じさせる。キラーズも80年代風バンドのひとつなんだが、じゃあこんな曲やってたバンドが80年代にいたか?具体的に名前挙げてみ?と思っていた。しかし自分でよく考えてみたら楽曲的にはキュアーとかがやってそうな気がしてきた。「Just Like Heaven」とか「High」とかの一環で。あ、だから俺この曲好きなのかも。ものすごく自己完結だが。

4.Stand Up Tall / Dizzee Rascal
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ディジー・ラスカルはラップという文脈で聴いてしまうとあまりにも異質なので、ガラージの流れで、あくまでも「クラブ・シーン」のひとつとして捉えるべきだろう。あのすっとんきょうな声も慣れないとふざけてるようにしか聴こえないと思うが、高速のエレクトリック・ビートに載せてひっくり返ったような声でコロコロとライムを乗っけていくこの曲は凄い!自分も知ってる英語という言語のはずなのに、ほとんど何言ってるのかわからないのも凄い。

3.I Believe In You / Kylie Minogue
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真面目に聴き込んでしまうとけっこうショボい曲だったりもするのだが、「Red Blooded Woman」「Chocolate」と比較的地味ながら質の高いシングルヒットを連発したカイリーの曲をどれか入れておきたかったので、やっぱり代表曲となるとこれかな、と。2004年を代表するバンド、シザー・シスターズと絡んでるという意味でも(シンガーのジェイク・シアーズとキーボードのベイビーダディが作曲+プロデュース)。
ここ数年の「復活」後のカイリーは一流スタッフ製作による完成されたサウンドで、いつでも必ずイケてる音を出してる必要があった。その緊張感をふっと抜いて、ともすると80年代的B級感さえも漂うこの曲を取り上げたのは、ベスト盤向けの新曲だからこそできたことなのかもしれない。「I, I, I believe in you...」というサビの旋律が絶品。2分を過ぎたところ、及び終盤で「I believe in you, I believe in, I believe in you, I believe in...」と一単語ずつ区切るように歌う部分で「カイリーらしさ」を表現した遊び心もいい。

2.Week In Week Out / Ordinary Boys
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これはもう理屈を越えている。イントロのギターのかっこ良さ!歌が始まる直前にちょっとだけトーンダウンして仕切り直すギターがまたかっこいい!ジャムだスミスだと色々言われた割にはあまり評価の続いていないバンドだが、私はとてもイギリスらしさを感じさせてくれる大好きなバンドだ。音楽的にうんぬんと言うより、その音の「鋭さ」が怒りまくっていた頃のポール・ウエラーや、レイ・デイヴィスや、モリッシー&マーと同じなのだ。怒りを表現しつつも、どうせならそれをカッコ良く見える形にする。それが「ロック的なカッコ良さ」ではなかったか。わざとそのカッコ良さをぶち壊して見せるのも最初はインパクトがあったが、今やそんなのは見てて惨めなだけ。やっぱロックはカッコ良くなきゃ。ルックスがほんとにOrdinary Boysなのが惜しい。これでルックスも良かったらもっと大ブレイクしてたんじゃないか。

1.Love Machine / Girls Aloud
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と、この流れで来て、1位がガールズ・アラウドってのもアレですが、とにかく名曲なので。
UKアイドルポップスを聴かない人には全然ぴんと来ないかもしれないが、このところUKアイドル勢による60年代テイストの曲に名曲が多い。少し前だとエマ(元スパガ)が「Maybe」という名曲をヒットさせた。オーディション番組出身のガールズ・アラウドもデビュー当時からロカビリーっぽさを取り入れたり、60年代風の音を意識していた。04年に登場したマクフライという子供バンドもロカビリー/ヒルビリー路線かと思ったら、シングルを重ねるに従いビーチボーイズ風だったりポール・マッカートニー風だったりして、まったく侮れない。
そしてこの曲。ヒルビリー風の大胆なアレンジもいいが、どんどん展開していく曲構成が見事。これはスパイス・ガールズの「Wannabe」の再来と言ってもいいぐらいの完成度だ。イギリス以外でどうしても人気が出ないようだが、それは単にまじめにプロモしてないだけのことだと思うので、アメリカ進出は難しいとしても日本では何とかしようよ。「The Show」もよくできた曲だし、ポインター・シスターズの「Jump」のカバーも悪くない。

というわけで、次回からはアルバムを。
posted by しんかい at 14:47| 東京 🌁| Comment(1) | TrackBack(8) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月14日

年間投票 その2

少し間が開いてしまったけど、年間ベスト選考の続き。
今回はNON-TOP40シングル部門。

10.Drop The Pressure / Mylo
実はこれ、投票が終わってからアルバム聴いたんだけど、イイ!投票前に聴いてれば確実に入れたのに、惜しいなあ。なかなか置いてなかったんだもん。とりあえずこの曲に関して言えば、「グルーヴィでカッコいいダフト・パンク」だ。
私にとってテクノ系のグループは、「グルーヴ感」でその評価が決まる。だから、肉感的なグルーヴ感がなく、いかにもオタクが「頭」で作りました、という感じのケミカル・ブラザーズなんかはかなり嫌いで、その対極として、頭よりとにかく先に体で感じる初期プロディジーなんかは大好きだったりする。
モービーは一時期評価していたが、それはアップの曲ではなく、スローな作品を一種のプログレとして楽しんでいただけだし、ダフト・パンクやファットボーイ・スリムなんかはもっぱらビデオクリップしか面白いと思わない。
そんな私も納得したのがこの曲。テイストは非常にダフト・パンクに似ている。しかし決定的に違うのは、肉感的なグルーヴだ。聴いていて実に気持ちいい。

9.Thunderbirds / Busted
いい加減飽きてるんだが、一時期やたら好きだったので。「Who's David」とか他の曲も好きなんだけどね。密かにハズレ曲がないのでお気に入りのグループだったんだけど、解散は残念。
どちらかというとこれは「聴く」より「歌う」機会の多い曲だったような気も。CD持ってないし。

8.Last Train Home / Lostprophets
この曲以外は全然好きなバンドではないんだが、やっぱりこのサビは何とも抗し難く気持ちいい。初めて聴いた時は実際のサビの前の部分をサビだと思い込んでいたので、あの一瞬の間を置いて「And we sing〜」と始まる本当のサビには一発でやられた。これだけルックスがいいのに何で日本でもっと人気出ないんだろう。単に真面目に売ってないだけか?

7.Call Off The Search / Katie Melua
これは、ちょうど1年ほど前、ロンドン出張に行ったときに買ってきた。ほとんど観光する時間もない強行スケジュールだったけど、朝10時の開店とほぼ同時にVirgin Megastoreに駆け込んで買ってきたわけですよ。ああ、ちょうどBrit Awardsの翌日だったなあ。
アルバムが1位になってたんだけど全然情報が入ってこないし、ヒット曲らしいヒット曲も出ないし、こいつは何者なんだろうとずっと気になってて、ようやく手にしたら自分好みの音だったのでめでたしめでたし。
ジャズとフォークの中間というか。その中でもほわ〜んとドリーミーな、お伽噺の世界みたいなこの曲は彼女のロリ声も堪能できて絶品。

6.Irish Son / Brian McFadden
これはある意味掘り出し物。ブライアン君は、あの元ウエストライフの彼です。
まあ、ウエストライフなんてのは、我々の年代の男性から見れば「ウザい」存在でしかないわけで。「My Love」とか名曲もあるけどね。
で、当然、ブライアンが脱退してソロになるなんて言われても何の興味も示していなかった。全英No.1のデビューシングルもダルいバラードだったし。しかし。2曲目のヒットであるこの曲で、ハッとした。何だ。こいつ、こんなことがやりたかったのか。だからウエライ脱退したのか。ちょっと、目から鱗だった。
彼が育ったダブリンへの愛情に溢れた曲。そして、宗教というデリケートなテーマを全編で扱う非常に意欲的な曲だ。何よりも、この爽やかで屈託のない曲調。いわゆる「ロック」な人々なんかよりよっぽどいい味出してるじゃん。
と、すっかり彼を見直した曲。アルバムも全体的にこの感じを期待しても外さない。

5位以上はまた改めて。
posted by しんかい at 02:08| 東京 ☀| Comment(7) | TrackBack(8) | 2004年ベスト作品選考シリーズ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月12日

「大仏破壊〜バーミアン遺跡はなぜ破壊されたのか〜」高木徹著

DaibutsuHakai.jpg

良書である。
以前アフガニスタン関連本をここで紹介したが、その後もアフガン関連のいい本を探していたら、これが見つかった。NHKのドキュメンタリーを製作している人で、この本もその番組の取材に基づく内容。とても理路整然としていて、情報がすっきり整理されている。
そして、恥ずかしながら、自分の無知を徹底的に思い知らされた。今まであちこちで読み、聞きかじって、それを鵜呑みにしていた自分を、猛省させられた。
例えば、タリバンとアルカイダの関係。タリバンとは、混迷のアフガニスタンを統一し、厳しく統制しながらもひとまずは内戦を集結させ、安定した生活を取り戻した組織だ。アルカイダとは、お馴染みオサマ・ビン・ラディンが率いるアラブ人のテロ組織で、もともとはアフガニスタンのものではない。色々事件を起こして居場所がなく、また、ソ連のアフガニスタン侵攻の際には兵士として戦ったという経歴から、ビンラディンはアフガニスタンに身を寄せた。そのとき、アフガニスタンはタリバンにより統治されており、その最高指導者であるムハンマド・オマルは、ビンラディンを「まあ、問題起こさないでおとなしくしてりゃ居させてやってもいいぞ」程度に、軽くあしらっていた。
しかしやがてビンラディンはその資金力と政治力とカリスマによってどんどん力をつけ、タリバン政権中枢に入り込み、タリバンをすっかり変質させてしまった。
またタリバン政権が設立した「勧善懲悪省」という組織が暴走を始める。イスラムの掟に従わない者を罰するという、我々からは想像のつかない任務を背負った彼らは次第に権力を手にし、政府の中枢にいる役人たちでさえ、勧善懲悪省の管理下に置かれ始める。
タリバン自体は、「世界」に顔を向け、開放する方向に向かおうとしていた。しかし勧善懲悪省が「世界」、すなわちキリスト教が支配する世界との交流を拒み、国民に徹底した節制を強いた。

バーミヤンの大仏破壊は、「偶像崇拝」を禁ずるイスラムの教えがその発端である。もともと仏教徒たちが築いた像だが、今はこの地域には仏教徒は住んでおらず、アフガン全土がイスラム圏である。従って仏像には実質的に「偶像」としての機能はない。そもそもこれまで千年もの間、歴代のイスラムの指導者たちはこの「偶像」の破壊など試みることはなかった。
地元の人々をはじめ、古くからタリバンに関わっている人々も、一般のアフガニスタン国民も、破壊には反対していた。では誰がそれを進めたのか。勧善懲悪省と、オサマ・ビン・ラディンだった。
ビンラディンに進言され、もはや洗脳された状態になってしまったオマルは大仏破壊指令を出した。しかし固い岩盤に掘られた巨大な仏像は、ちょっと戦車で撃ったり、爆薬を仕掛けたぐらいでは表面的な傷を与えるぐらいしかできなかった。タリバンが遅々として破壊に手間取っていると、そこにアルカイダが、ビンラディンに率いられて登場。5トンにも及ぶ爆薬を調達し、大仏を破壊した。

大小2体のバーミヤンの大仏を破壊。その半年後、ニューヨークのツインタワーを破壊。
単に象徴的な意味ではなく、バーミヤンの大仏破壊は、9.11の序章だった。

こういった内容が、関係者の証言や現地での取材に基づき、整然と述べられる。目から鱗の事実が次々に現れる。これほど夢中になって読み進めた本は久しぶりだ。

大仏を破壊するという情報が世界に伝わると、世界は騒然となった。各国の議員や大使がアフガン入りして説得を試みた。アナン国連事務総長まで登場した。もっとも力が期待されたのが、アラビア半島などイスラム教の「本場」から集められた、高名なイスラム神学者たちの「ドリームチーム」だった。
しかしその誰も、勧善懲悪省とビンラディンが後押しするタリバンを押えることはできなかった。
ビンラディンにはその先に続く野望があったのだろうが、勧善懲悪省の役人たちはこう言った。
「アフガニスタンは何年も内戦と、旱魃と、飢饉に苦しんできた。何十万人、何百万人が命を落としてきた。しかし国際社会は我々を無視し、何の救いも差し伸べられなかった。その連中が、大仏破壊と聞くと、血相を変えて我々を説得しようとする。人が死んでいくのは黙って眺めていたが、「文化遺産」が危険にさらされると黙ってられないと言う。そんな連中の言うことを、我々が聞く義務があるか?」
「偶像」である大仏を破壊することが宗教的に正しいと信じる者が、こんな風に考えてしまったら。

これほど重みのある事実が、世間ではあまり広く知られていないことに、改めて驚愕する。どんなにメディアが発達して、便利な世の中になっても、やっぱり真実は自分の探し出さなくてはいけない。
溢れんばかりの情報の中に浸って、誰かが答えを与えてくれるのだという気分でいると、恣意的な情報にミスリードされる。いつの世も、民衆は愚かであり、情報を制するものが、世界を制する。
posted by しんかい at 01:03| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(3) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年02月06日

Straight Outta Compton by Nina Gordon

まだまだN.W.A.が怪しげなチンピラで、本当におっかない存在だった頃。その名を轟かせたのは、警官を「Damn motherfucker with a gun」と煽り、勢いに任せて放送禁止用語を放ちまくる「Fuck Tha Police」、そしてアルバム「Straight Outta Compton」だった。
その「Straight Outta Compton」をカバーしたらしい。ニナ・ゴードンが。

Nina.jpg

ニナ・ゴードン。元ヴェルーカ・ソルトで、バンド解散後は超ラヴリーなソロアルバム「Tonight And The Rest Of My Life」を出したあの人である。このアルバムが出た頃プロモ来日したので新宿タワレコに会いに行って握手して「ぼくのウェブサイトであなたのアルバムを大絶賛してます」とか伝えてきた(だってほんとに褒めてたし)。まあそんなことはいいんだが、基本的に切なげな声がかわいい人なので、ラップとかやる感じではないし、ましてやmotherfuckerとか言うタイプではない。
Googleで「Nina Gordon Compton」と入れてみた。トップでヒットしたのはニナ・ゴードンの公式サイト。その中にあっさり音源が見つかった。ライヴでお遊びっぽくレコーディングしたらしいカバー音源がいくつかダウンロードできるようになっていて、スキッド・ロウとかシンデレラとかフィル・コリンズのカバーに並んで、あった。「Straight Outta Compton」。

アイス・キューブのパートをそのまんま言葉を全然変えずにカバー。アコギ一本で、なんとなくそれっぽい可愛らしいメロディをつけて、フォークソングのように歌われる。「Ice Cube is crazy as fuck」とか。これは笑った!いやーやっぱこの人可愛いわ。早く次のアルバム出さんかね。

「Straight Outta Compton」のダウンロードはここで:ninagordon.com

聴く時は、必ず、まずN.W.A.のオリジナルを聴いた上で。オリジナルを知らずにニナのバージョンだけ聴いてもその面白みは伝わらない。
posted by しんかい at 14:32| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(0) | 洋楽ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

チェ・ゲバラ 革命を生きる

映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」のヒットのおかげで、最近チェ・ゲバラに関する本が充実している。
チェの本に特徴的なのは、写真や図版をやたら豊富に使った本が多いことだ。これは、チェ本人の性格にもよるものだ。チェは、とにかく記録魔だったらしい。だから、今みたいに何も考えずに気軽にデジカメで撮りまくれるような時代ではなかったにも関わらず、彼は要所要所で写真を撮りまくった。更に、それを受け取った奥さんや、遺された子息たちが、それをきちんと整理し、保存した。だから、写真とか関連資料がやたら豊富なんだそうだ。

KakumeiWoIkiru.jpg

以前もここで写真満載のチェ・ゲバラ本を紹介したが、今回紹介するのはそれよりも更にお手軽な、まさに入門版として最適なもの。写真満載のビジュアルな作りながら、物語風にきちんとチェの人生がわかる作り。文章の量は多くないので短時間で一気に読めるだろうし、「モーターサイクル・ダイアリーズ」のように彼の人生の一部分だけにスポットを当てたものではなく、幼少時代から亡くなるまでを全部網羅している。流石にこの文量だと読み物として面白く盛り上げるには無理があるので、ドラマチックな人生の割にはちょっと淡々としてるようにも感じられるが、まずは基本を押える、という目的ならこれはかなりいい本だ。なぜ、彼はこんなに「偉大な人」扱いされるのか。チェ・ゲバラTシャツを手に入れる前に、最低限このぐらいは読んでおこう。
posted by しんかい at 03:49| 東京 ☀| Comment(1) | TrackBack(1117) | 本ネタ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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